横浜の住宅街にある、インド系インターナショナルスクール。開校からずっと子供たちを見守り、日本人との窓口になり続けてきた、トゥリーさん。

横浜の住宅街にある、インド系インターナショナルスクール。開校からずっと子供たちを見守り、日本人との窓口になり続けてきた、トゥリーさん。

2023年11月1日

記 松井雅枝/ラウンジスタッフ

霧が丘にあるインディアインターナショナルスクールで交通安全教室を開催させていただいたご縁で、トゥリー(Tuli Patra)さんにお会いしました。この学校では幼稚園生から高校生までが学び、「モンテッソーリ教育」を実践しています。トゥリーさんは現在幼稚園の先生ですが、日本語と日本の文化を理解していることから、2004年の開校当初から「日本人窓口」の役割も請け負ってきました。日本語ペラペラで、いつも元気で気さくなトゥリーさんにお話を聞きました。


「とにかくやってみる」

全く日本語が分からないまま22年前に来日してきた当初は、1歳の息子さんが日本の病院のお世話になることが多かったそうです。病院ではほとんど英語が通じず、大変だったそうですが、その経験が必死に日本語を勉強する動機にもなったそうで…。
「とにかく何でもやってみる。上手くいかなくても怒られることはない。むしろ助けてもらうことが多かった。」と語るトゥリーさん。地域の国際交流ラウンジで5年間日本語を学び、積極的にボランティア活動にいそしんだそうです。インド料理をふるまったり、子供たちに英語を教えたり。「ママ友を家に招いて、ランチ会もした。ママ友から学ぶことは多かった。日本の文化、習慣、学校制度のことなど。」とのこと。なるほど、このような経験を通して素晴らしいコミュニケーション能力を身に着けたのか、と納得してしまいました。


「子どもに教える喜び」

子どもが幼稚園に行くようになった段階で、「預けている時間帯に働きたい!」ととにかく周囲の人間に自分の想いを伝えた結果、知り合いにALT(Assistant Language Teacher 外国語指導助手)の職を紹介してもらい、日本の学校で働きはじめることになりました(このご縁から、今でも桜木町にある横浜市教育会館にて日本の学生に毎月英語をボランティアで教えているそうです。)。ALTとして働いていた折、横浜にインド系インターナショナルスクールができることを知り合いから聞き、学校長を紹介してもらうことに。
ご自身もインドでモンテッソーリ教育を受けてきたそうですが、教育する側として必死になって教育に取り組み直したそうです。


「日本で驚いたこと、感心したこと」

インドでは電車で話しかけることは当たり前。長旅になると、食事を分けたり、新聞を回し読みしたり。日本では電車で皆静かにしていることに驚いたそうです。
そして、インドでは親以外の大人が子どもに注意することはあまりないそうです。教育現場でも、担任以外の先生が生徒に注意や指導をすることはない。日本で子供に対して周りの大人が注意する場面を見るたび、感心したそうです。「分からないことが多い子どもに周りの大人が教えてあげることは、とても良いこと。親以外と過ごす時間に学びや気づきの機会があることは素晴らしい。」と語ります。
しかし、トゥリーさんが最近悲しく思うようなクレーム電話を受けることがあるそうで…。バスや電車での子どもの大きな声での会話を本人に直接伝えることなく、学校にクレーム電話をしてくる日本人が増えているそうです。中にはおしゃべりしていた生徒の写真を送ってきて、個人を特定して不満をぶつけるケースも。学校でも公共交通機関でのマナーを教えているそうなのですが、日本の習慣を身につけていない子どもに対して私たちにも出来ることがあるのではないか。国籍にかかわらず、子どもたちの学びにとって良い環境とはどのような環境なのか。など、考えさせられてしまいました。
外国人に注意することは、私たちにとってハードルが高いことではありますが…。


「ご縁でつながる今」

関心を持ったらそれを口に出し、行動に移すトゥリーさん。そんなトゥリーさんの半生を伺っていると、「ご縁」の意味が少し見えてくるように思えます。つい「できない」を探してしまいますが、「とにかくやってみる」姿勢をわたしの生活にも取り入れたいと思わされたお話でした。